日本を代表するゲーム『ポケモン』が初の実写映画化。
ピカチュウを主役に『名探偵ピカチュウ』が公開された。ポケモン世代としては製作発表時から注目していたが、予告が初公開された時はポケモンたちの生々しい生物感に嫌悪感を抱いたことを告白しておく。
不安と期待が入り混じるピカチュウは素晴らしい作品だった。ポケモンファンなら見ておくべきと断言できる。
ポケモンというと子ども向けと思う人もいるだろう。
アニメ版は大人でも楽しめる深い要素が盛り込まれていることもある。
そして『名探偵ピカチュウ』はコミカルで明るくもシリアスさをはらんでいる。
父の死の謎を追う青年ティムとピカチュウがパートナーを組み、謎を解き明かしていく筋書きだ。
この作品は『ミュウツーの逆襲』に対するリスペクトを感じる。
ミュウツーの逆襲はポケモンという子ども向け作品を逆手に取り、生命とは何かを真摯に問うたハードな作品だ。
『名探偵ピカチュウ』も生命倫理と人間の業を描いている。
人間がポケモンを利用し危険な計画を企てる。それをティムとピカチュウのコンビが阻止するのだ。

(C)2018 Pokemon
人間の欲望や思考の恐ろしさを存分に描くことで、単純な子ども向け作品にはとらわれない奥深い物語を描いている。
鍵となるポケモンがミュウツーという点も『ミュウツーの逆襲』に対する強いリスペクトを感じてしまう。
ポケモンとは、人間とは一体何か。
言葉が通じても通じなくても分かりあえるのだろうか。
そんな普遍的なテーマをポケモンという異種を通すことで改めて問いかけてきている。
この世界は本当に素晴らしい。
ライムシティではポケモンバトルすら禁止されている。ポケモンと人間に区別はなくお互いに力を合わせて住みやすい街を作るパートナーとして描かれている。
アニメ版のような共存の世界を実写で描いてしまっている。
警察がガーディを連れている、ゼニガメが消防で消火活動に励んでいる、ピジョンが荷物を運ぶ…などなどアニメでみた光景がそのまま描かれているのだ。
アニメへの強い愛情を感じてみるだけで多幸感に支配されてしまう。
この世界にはポケモンが確かに存在し人間とともに暮らしている。
実写では不可能かと思われていた共存の世界をこれでもかというほど存分に描いている。
製作陣のポケモンに対する深い愛情が伺える。
予告では嫌悪感もあった生々しいポケモンたちも気づけばすっかり愛おしい存在になっていた。
あの世界に溶け込ませるにはある程度の生々しさが必要だったのだろう。
それが功を奏した。ポケモンはあの世界に確かに存在していると確信させるVFXだ。
一度見ればこの世界に入り込みたくなる。
鑑賞後はポケモンがいない現実世界に軽く鬱のような状態になるだろう。
それほど凄まじい作品だ。ポケモンの世界を完璧に描き、物語も骨太という不可能さの両立を見事に成し遂げた。
エンディングもポケモン愛に溢れており、最後まで見逃せない作品になっている。
もふもふのピカチュウ家にこないかな…。