『ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝-永遠と自動手記人形-』だからこそ言葉を紡ぐ 

『愛してる』の意味を探すために。

そんな少女の姿を描いたアニメ『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はあまりにも美しかった。

感情と言葉の意味を知らない少女は手紙の代筆サービスを行う自動手記人形(ドール)になり手紙を書いていく。

記されているのはただの文字だ。だがそこには差出人の思いが込められており、受取人を幸せにしていく。

ただの文字がなぜ人を幸せにしたりできるのだろうか。

テレビ版はそんな言葉の意味をひたすらに美しい映像で伝えてきた。

 

外伝では手紙の代筆で言葉の力を理解したヴァイオレットがドールの枠を超え大貴族ヨーク家の娘『イザベラ』の家庭教師を務めることになる。

完璧な作法でイザベラを支えるヴァイオレットの姿は献身的だ。無駄のない言動は美しすぎ、劇中のモブキャラクターのように感嘆の声が出そうになる。

高貴な家柄ながらも作法が身についていないイザベラはどこか憂いがある。

何もできないとふさぎ込み自分の世界に逃げ込む彼女は悲しげで女学校に通っているはずなのに途方もない孤独を感じさせる。

 

(c)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
(c)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

二人はどこか似ているので。孤児であり戦争で戦うことしかしならかったヴァイオレットがドールの仕事を通して言葉と感情の持つ力を理解したように、イザベラもヴァイオレットとの交流で作法を身につけ人と関わることの重要さを理解する。

 

ヴァイオレットの心の旅路をイザベラで描いているのだ。

手紙ではなく交流と言う最も近しい手段で、彼女を成長させていく。

 

だが本編は少し駆け足に感じる部分もありテレビ版のような心の機微があまり描けていないように感じた。

イザベラの精神、心の成長過程の描きが薄いと思えてならない。しかし、美しい映像とシンクロする心情表現は見事であり、不満を薄める作用すら持っているほどだ。

 

外伝は二部構成となる。

第一部がイザベラ編であり、第二部はテイラー編だ。

C.H郵便社を訪ね郵便配達員になると宣言する謎の少女テイラーを軸に、彼女とイザベラの関係性と言葉の力を描く。

(c)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会
(c)暁佳奈・京都アニメーション/ヴァイオレット・エヴァーガーデン製作委員会

第二部が優れている点は無駄のないところだ。

ただシンプルに幸せを運ぶ配達員へと成長するテイラーを描く。

彼女は自身の幸福を伝えるためにある人に手紙を書くのだが、それが非常に簡素なのだ。

思いを伝えることに長文は必要ない。短くとも思いは伝わる。

 

言葉は強大な力を持っている。

たったの数文字で人を幸せにもできるし不幸にもできる。

口から直接出さなくとも文字で伝えることが出来る。

遠くにいてもあなたのことを思っていると伝えられるのだ。

 

目には見えない。どこにいるか分からない。

それでも手紙ならば幸福だと伝えられる。

この作品はひたすらに言葉の力を描いた。

 

美しい映像で言葉の強さを伝えてきている。

 

あの事件の後に本作が劇場で公開されたのは奇跡的ともいえる。

言葉の力は創作の源流であり、やがて映像や音に繋がる。

 

手紙は永遠に残り続ける。たとえ捨ててしまっても、思いが消えることはない。

映像も同じだ。永遠に残り続ける。

関わった人の思いがこの作品に注ぎ込まれている。犠牲者は作品の中で生き続けていく。

 

『永遠』がタイトルに冠されたのは偶然なのだろうか。

届かない思いは無い。京都アニメーションの強大な意思は確かに受け取った。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です