『HELLO WORLD』感想 間違いなくSF、素晴らしい作品が誕生した

青春SF。そんな雰囲気を醸す予告編。ラブストーリーあり、アクションあり、そんな単純明快なSFだと思っていた。

だがふたを開けてみるとこれは間違くなくSFだった。本格派の強烈な匂いが鼻から脳へと刺激してきた。

久々に「SF」を見たと感じさせるだけの作品だ。

 

物語は2027年。高校生の堅書直実元に10年後の自分が現れる。彼は直実に彼女を作るためにやってきたのだ。

やがてこの世界の真実、直実の彼女の運命が明かされていく。

 

一見するとボーイミーツガールなSFに見えてくる。少年に彼女を作るため10年後の自分がやってくる…。

少年の未来を変えるために使者がやってくるというのはなんだかドラえもんめいた物語に思えるだろう。

 

だが本作はそんな単純な物語ではない。

複雑に階層付けられ、集中して鑑賞しなければ意味が理解できなくなるような科学的用語が頻出する。

元素記号まで登場する始末で、科学要素を色濃く押し出しておりハードSFな風格すら漂わせているほどだ。

この世界の真実が明らかになるにつれ、物語はより一層複雑さを増していく。

(C) 2019「HELLO WORLD」製作委員会
(C) 2019「HELLO WORLD」製作委員会

予告編から全く想像が出来ない物語が展開されていく。

10年後の自分がなぜこれほど必死に彼女を守ろうとしているのか、それが痛いほど理解できる構造になっているのも良い。

この物語は過去と未来の強い思いが描かれている。

思いはどこにいても通じるということを伝えたいのだ。

 

例え10年、20年経っても思いは変わらない。変わらない思いがあれば奇跡すら起こせる。

そんな実直な願いが込められている。

 

映像美、しっとりとした音楽が京都と主人公たちの世界を彩り、複雑怪奇な物語に深みを与えていく。

演出面では『君の名は。』の強い影響下にあるが、音楽の使い方は新海監督の方が一歩先を進んでいるように感じた。

 

だがエンタメよりもSFの濃度が濃く感じられ、ハリウッドのハードSFにも比肩しうる力量を感じさせるほどだ。

久々にSFを見たと満足感をもたらせてくれる。

 

アクションあり、ラブストーリーあり、美しい映像と美しいヒロイン。頼りない少年がかっこよくなっていく様も含めて、王道的な青春エンタメを見せつつも強いSF要素を盛り込み知的好奇心すら刺激する高度な作品だ。

 

観客側に一定のSFリテラシーがないと置いてけぼりにされてしまうのではと思うほどSFしている。

近年の日本映画では最もSFらしい仕上がりだ。

 

松坂桃李、浜辺美波、北村匠海を主演声優に起用し、音楽も若手人気バンドを起用するなどし一般若年層へ訴求したいのだろうが、内容が少し難解さを伴うので一般に受けるのかは疑問だ。

だが一部に熱狂的なファンを生みそうな熱量がある。後年にカルト化していそうで、そういった点もSFっぽい。

 

映像が3DCGというのですら仕掛けであるのだから、この作品は高度すぎる。

私は大好きだ。今年鑑賞した映画の中でもトップに食い込んできた。もう一度みたいと思うほどに。

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